昨日、2月に私の所へ「 無農薬の藁 」を求めて来られた、名古屋の左官屋さんの所へ、勉強を兼ねて現場見学に行ってきました。
福田業務所(FUKUTA plasterer work office)の福田さんは左官職人です。自然の素材を使い、人にやさしい安全快適な住空間づくりを理念とされ、漆喰と石灰モルタルに力を入れられておられます。 普通の左官職人とは異なり、化学製品や樹脂に頼らない独自の材料を調達・配合して、独自の施工法で、漆喰の壁を作っておられます。
「漆喰や石灰モルタルとは一体なんだ?」というと、今も残る古代ローマの建築物や、古くから日本の建築物の材料であり、5000年以上も古くから現在に至るまで、人の暮らしの中心にあるシンプルな素材です。
「どんな働きをするのか?」というと、雨や湿気に対する防水性 ・ 火気に対する不燃性 ・ 調湿機能(湿度が上ると湿気を吸い、乾燥すると湿気を吐く。土蔵の仕組みです。) ・ 気硬性(長い年月をかけ、二酸化炭素を吸収しながら硬化していく。岩に戻っていく感じ。) ・ 有害物質の吸着と分解の機能 。 そして何より僕が気に入っていることは、長い期間美しい姿でたたずんでくれることです。
「では、それは何でできているのか?」というと、簡単にいうと石灰です。 石灰とは、石灰岩を焼いて二酸化炭素をとばして作られます。 石灰岩とは、大きな岩石である地球を形成している鉱物のひとつです。 そして、石灰に水を混ぜると漆喰の出来上がりです。 化学式ではこういうこと。 (おもいっきり大雑把で私のメモ程度なので、責任はとれません、各自で判断してください)
CaCO3 (石灰岩) → CaO (石灰) + CO2 (二酸化炭素) CaO (石灰) + H2O (水) → Ca(OH)2 (漆喰)
そして、漆喰を塗り終わり水が飛んで乾燥すると、ゆっくり時間をかけて空気中の二酸化炭素を吸収しながら、岩に戻ります。
Ca(OH)2 (漆喰) → CaO (石灰) + H2O (水) CaO (石灰) + CO2 (二酸化炭素) → CaCO3 (石灰岩)
この簡単な仕組みで、何千年の昔から人々が使い、地球の一部となり今も残っている。木と同じ自然に逆らわないの素材なのです。
ところで、なぜこんな良いものが減ってきたのか・・・?
理由は木の家が減ったのと同じで、時間や技術といった手間がかかる。 だからお金もかかるし、自然の素材なので勿論自然に従い影響を受ける。 米や野菜と同じで、自然の影響を受けず人工管理して製造する方が、企業も手間がかからず大量生産して安く提供できる。 消費者も、整った商品のような野菜や米の方が、きれいでしかも安いので購入する。
家も無垢の木と漆喰で職人が作るよりも、工場で化学製品や産業廃棄物をまぜて、商品を大量に製造して組み立てる方が、 消費者も見た目がきれいで安いので購入する。
副作用は原因が分からないものもあるが、シックハウス症候群や最近多いアレルギーやいろんな病気。または耐震偽装事件もそう、なんでも安いという事 だけで行動することは、危険な場合がある。もし何か起こった時には、結局自分に返ってくる。寂しい言葉ですが、自己責任だと思いました。
大事なことは、とにかく自分の目や耳や足で事実を調べ、自分なりに危険な事(リスク)と投資金額(予算)と考えて、判断していくことです。 設計事務所の立場として、お客様にそういった提案・アドバイスをすることは、今後大事な仕事になるように思いました。
ちなみに、昨日いろいろ話をうかがって、自分の家やる時は、漆喰を最優先して使おうと改めて思いました。
福田さんとの話について、もっと伝えたいことがありますので、自分なりに理解を深めて改めて報告します。